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ではそんな「神の意識」の持ち主ルパンと他キャラの関係を、「ルパンvs複製人間」は一体どんな風に描いたのでしょうか。ここでも「夢」をキーワードに考えてみたいと思います。
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まずはこの作品の裏の主人公・マモーから行ってみましょ う。前半で書いたように「複製人間」における「夢」を「自己の存在を確立するために志向する対象」と定義した場合、マモーの「夢」は神であることだったのではないかと思います。彼が執拗に主張したのはそこでしたし、追い求めていた「不老不死」も歴史に干渉する力を持つまでに至ったマモーが本当の神になるた めに必要不可欠だったのでしょう。
そんなマモーがもう一人の神たりえるルパンと出会った時に取ろうとした選択は、ルパンを亡きものにすることでした。これには二つの理由が考えられると思います。
一つ目はルパンの持つ「神の意識」に嫉妬したというもので す。世界の存在なしに自分を確立できるルパンのありようは、神であることを証明するために世界を支配することが必要だったマモーにはまねのできないものですね。そしてもしかしたら、マモー以上に「世界を創造する者」にふさわしいありようなのかもしれません。だからマモーはルパンを殺さなければならなかっ た。
もう一つの理由は二人の神が並び立ちえなかったからというものです。
マモーが神であるために目指したのは、世界を支配下に置くことです。これは単純に誰かを命令に従わせるというだけの意味ではありません。むしろこの世に存在するすべてのものが彼の作り出した秩序の中で生きていくということこそが重要なのです。
しかしマモーにこの世のすべての存在を一から生み出す力も 時間もないはずです。実際ルパンのことを「不確定性の私生児」と呼んでおり、彼の誕生に自身が関わっていないことを示唆しています。一から世界を創造する かわりに、マモーは歴史に気ままに干渉することで神を気取りました。この方法だと世界のごく一部しか支配できていないはずですが、一度「夢」の話に戻ると マモーの考え方が垣間見える気がします。
前半で述べた通り、神になりえない大多数の人間たちは自分 の外になんらかの志向の対象を見出すことで、己の存在を確立してきました。つまりマモーが関与した世界なしには、自己を確立できないわけです。このようにマモーは世界の一部を思うままにすることで、間接的なかたちで全人類の存在に干渉し、己の支配欲を満たしてきたのではないでしょうか。
だとしたら、世界を必要とせず自己を確立できるルパンの存 在はマモーにとって許しがたいものだったはずでしょう。マモーが関与した世界を必要としていないということは、ルパンの自己確立にマモーが干渉できないと いうことです。そしてその事実はマモーが「神」であることを脅かすものだったから、ルパンの存在は是が非でも消さなければならなかったのだと思います。
逆にルパンの側に立ってみると、自己の確立は自分の意識のみに基づかなければならないのですから、そこに干渉してこようとするマモーは「夢」と相容れようがありません。究極の自由人ルパンがマモーの支配を甘受できるはずがないのです。
このように二人の「夢」は共存できないものでしたし、二人もそのことを認識していたからこそ、全てを賭けて戦わなければならなかったのではないでしょうか。
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「夢」絡みのシーンはありませんが、銭さんにもさらっとだけ触れてみましょう。
とっつぁんは「複製人間」でも通常運行で、警察を辞職してまでルパンを執拗に追っています。本当にこの一途さには頭が下がりますよね。
そんなとっつぁんのことでちょっと気になったのが、冒頭の ルパンとの会話。コピー処刑の報を受けているとっつぁんはルパンの姿に「おまえは死んだはずだ」と驚くのですが、目の前にいる男が自分の知るルパンと重 なった瞬間に「貴様が死なんなら俺も死なん。こうなったら終わりはないぞ。地獄の底まで付き合ってやる」と啖呵を切ります。
いつものことながらとっつぁんらしい執念を感じさせる部分 ですが、ルパンの「夢」を思い返してみるとまた違った感想が浮かんできます。作中言葉で語られるか否かを問わず、それぞれのキャラクターの「夢」が提示さ れていますが、同じ「夢」を抱いているのはルパンととっつぁんだけなのですよね。二人が志向するのは「ルパン」という存在そのものです。
とっつぁんはルパンとマモーの対決には絡みませんし、何が 起こっているのかすら最後までほとんど知らずにいたでしょう。それでもとっつぁんはルパンが提示した「夢」にこれ以上ないほど呼応しているんですよね。警察官としての活躍はあまり見ることができませんでしたが、ルパンと肩を並べられるのはとっつぁんだけなのだということを改めて感じた作品でした。
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最後は次元について。
本筋には絡まなくてもルパンと呼応し合っていた銭さんとは 対照的に、次元はほとんどの経緯を知りながらルパンの「夢」の意味するところを見抜けませんでした。この事実で次元がルパンの良き相棒で最大の理解者であ るということは揺るがないと思います。究極的に言ってしまえば、次元がルパンの相棒たれるのは、自分には理解することも辿りつくこともできない高みにいるルパンを一心に追いかけられるから。次元はルパンと比べてしまえば至って平凡な人間ですし、それでいいのです。
前半冒頭であげたやりとりには「夢」のほかにも印象的な言葉が登場しましたね。そう、「クラシック」です。この言葉はこのシーンの前にも出てきました。ピラミッドから脱出するシーンで、帽子を飛ばされないように 必死に押さえている次元をルパンが「クラシック」と評したのが最初です。これに対する次元の答えは「昔からのトレードマークをそう簡単に変えられるか」と いうものでした。
・・・ここのやりとり、全体を観終わったあとで振り返ってみるとひどく意味深だと思いませんか。
次元がルパンの「夢」を理解できなかったのは、次元がごくごく普通の人間だったからです。神にはなれない次元は、自分の外の何かを志向せずにはいられないのですよね。だからルパンに「夢」を語られた時、ルパンの外に「夢」を探して「女」という答えを導き出したわけです。
そんな次元の外部への志向を端的に表したのが、帽子をめぐ る会話なのだと思います。次元は自分の象徴である帽子を手放すのを極度に嫌います。こうした外部的な「自分らしさ」にとてもこだわるのです。さすがに帽子 というパーツ一つがなくなってしまっても次元が次元であることは揺るがないでしょう。しかし帽子、あごひげ、マグナム、ガンマンであること、ルパンの相棒 という立場・・・という風に彼を形作っているパーツを解体されてしまったら、次元は丸裸の状態で自分を保てないのではないでしょうか。「俺はルパンだ!」 というだけでいいルパンとは違うのです。だからルパンと次元がすれ違うこのシーンで、再び「クラシック」という単語が繰り返されたのだと思います。
それではそんな次元を、ルパンはどのように思っていたのでしょうか。ルパンは次元の不理解を皮肉りもせず、詰りもしません。次元の意思を尊重して一人で敵地に乗り込みましたが、自分たちの絆が損なわれたとは微塵も思っていないでしょう。
ここからは単なる印象の話ですが、ルパンは次元の不理解を 積極的に許容しているような気がします。ちょうど不二子の裏切りを「女のアクセサリー」だと言ってしまうのと同じ感覚で。圧倒的な高みに立つルパンだから こそ、次元の普通さをむしろ愛してしまうくらいの懐の深さを持っていると思うのです。しかも次元の本心は、「敵いっこない化け物」に挑むルパンの 無謀ではなく、ついていくと言えない自分自身の方を責めています。そんな相棒の心境に気付かぬルパンではないし、次元が見せた情・義理堅さに心が動かないくらいなら元々そばに置いていないでしょう。
そしてこれだけ根源的な違いを抱えているにもかかわらず、結局ルパンを追ったところに、次元がルパンの相棒であり理解者である理由があるのだと私は思います。
前編
まずはこの作品の裏の主人公・マモーから行ってみましょ う。前半で書いたように「複製人間」における「夢」を「自己の存在を確立するために志向する対象」と定義した場合、マモーの「夢」は神であることだったのではないかと思います。彼が執拗に主張したのはそこでしたし、追い求めていた「不老不死」も歴史に干渉する力を持つまでに至ったマモーが本当の神になるた めに必要不可欠だったのでしょう。
そんなマモーがもう一人の神たりえるルパンと出会った時に取ろうとした選択は、ルパンを亡きものにすることでした。これには二つの理由が考えられると思います。
一つ目はルパンの持つ「神の意識」に嫉妬したというもので す。世界の存在なしに自分を確立できるルパンのありようは、神であることを証明するために世界を支配することが必要だったマモーにはまねのできないものですね。そしてもしかしたら、マモー以上に「世界を創造する者」にふさわしいありようなのかもしれません。だからマモーはルパンを殺さなければならなかっ た。
もう一つの理由は二人の神が並び立ちえなかったからというものです。
マモーが神であるために目指したのは、世界を支配下に置くことです。これは単純に誰かを命令に従わせるというだけの意味ではありません。むしろこの世に存在するすべてのものが彼の作り出した秩序の中で生きていくということこそが重要なのです。
しかしマモーにこの世のすべての存在を一から生み出す力も 時間もないはずです。実際ルパンのことを「不確定性の私生児」と呼んでおり、彼の誕生に自身が関わっていないことを示唆しています。一から世界を創造する かわりに、マモーは歴史に気ままに干渉することで神を気取りました。この方法だと世界のごく一部しか支配できていないはずですが、一度「夢」の話に戻ると マモーの考え方が垣間見える気がします。
前半で述べた通り、神になりえない大多数の人間たちは自分 の外になんらかの志向の対象を見出すことで、己の存在を確立してきました。つまりマモーが関与した世界なしには、自己を確立できないわけです。このようにマモーは世界の一部を思うままにすることで、間接的なかたちで全人類の存在に干渉し、己の支配欲を満たしてきたのではないでしょうか。
だとしたら、世界を必要とせず自己を確立できるルパンの存 在はマモーにとって許しがたいものだったはずでしょう。マモーが関与した世界を必要としていないということは、ルパンの自己確立にマモーが干渉できないと いうことです。そしてその事実はマモーが「神」であることを脅かすものだったから、ルパンの存在は是が非でも消さなければならなかったのだと思います。
逆にルパンの側に立ってみると、自己の確立は自分の意識のみに基づかなければならないのですから、そこに干渉してこようとするマモーは「夢」と相容れようがありません。究極の自由人ルパンがマモーの支配を甘受できるはずがないのです。
このように二人の「夢」は共存できないものでしたし、二人もそのことを認識していたからこそ、全てを賭けて戦わなければならなかったのではないでしょうか。
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「夢」絡みのシーンはありませんが、銭さんにもさらっとだけ触れてみましょう。
とっつぁんは「複製人間」でも通常運行で、警察を辞職してまでルパンを執拗に追っています。本当にこの一途さには頭が下がりますよね。
そんなとっつぁんのことでちょっと気になったのが、冒頭の ルパンとの会話。コピー処刑の報を受けているとっつぁんはルパンの姿に「おまえは死んだはずだ」と驚くのですが、目の前にいる男が自分の知るルパンと重 なった瞬間に「貴様が死なんなら俺も死なん。こうなったら終わりはないぞ。地獄の底まで付き合ってやる」と啖呵を切ります。
いつものことながらとっつぁんらしい執念を感じさせる部分 ですが、ルパンの「夢」を思い返してみるとまた違った感想が浮かんできます。作中言葉で語られるか否かを問わず、それぞれのキャラクターの「夢」が提示さ れていますが、同じ「夢」を抱いているのはルパンととっつぁんだけなのですよね。二人が志向するのは「ルパン」という存在そのものです。
とっつぁんはルパンとマモーの対決には絡みませんし、何が 起こっているのかすら最後までほとんど知らずにいたでしょう。それでもとっつぁんはルパンが提示した「夢」にこれ以上ないほど呼応しているんですよね。警察官としての活躍はあまり見ることができませんでしたが、ルパンと肩を並べられるのはとっつぁんだけなのだということを改めて感じた作品でした。
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最後は次元について。
本筋には絡まなくてもルパンと呼応し合っていた銭さんとは 対照的に、次元はほとんどの経緯を知りながらルパンの「夢」の意味するところを見抜けませんでした。この事実で次元がルパンの良き相棒で最大の理解者であ るということは揺るがないと思います。究極的に言ってしまえば、次元がルパンの相棒たれるのは、自分には理解することも辿りつくこともできない高みにいるルパンを一心に追いかけられるから。次元はルパンと比べてしまえば至って平凡な人間ですし、それでいいのです。
前半冒頭であげたやりとりには「夢」のほかにも印象的な言葉が登場しましたね。そう、「クラシック」です。この言葉はこのシーンの前にも出てきました。ピラミッドから脱出するシーンで、帽子を飛ばされないように 必死に押さえている次元をルパンが「クラシック」と評したのが最初です。これに対する次元の答えは「昔からのトレードマークをそう簡単に変えられるか」と いうものでした。
・・・ここのやりとり、全体を観終わったあとで振り返ってみるとひどく意味深だと思いませんか。
次元がルパンの「夢」を理解できなかったのは、次元がごくごく普通の人間だったからです。神にはなれない次元は、自分の外の何かを志向せずにはいられないのですよね。だからルパンに「夢」を語られた時、ルパンの外に「夢」を探して「女」という答えを導き出したわけです。
そんな次元の外部への志向を端的に表したのが、帽子をめぐ る会話なのだと思います。次元は自分の象徴である帽子を手放すのを極度に嫌います。こうした外部的な「自分らしさ」にとてもこだわるのです。さすがに帽子 というパーツ一つがなくなってしまっても次元が次元であることは揺るがないでしょう。しかし帽子、あごひげ、マグナム、ガンマンであること、ルパンの相棒 という立場・・・という風に彼を形作っているパーツを解体されてしまったら、次元は丸裸の状態で自分を保てないのではないでしょうか。「俺はルパンだ!」 というだけでいいルパンとは違うのです。だからルパンと次元がすれ違うこのシーンで、再び「クラシック」という単語が繰り返されたのだと思います。
それではそんな次元を、ルパンはどのように思っていたのでしょうか。ルパンは次元の不理解を皮肉りもせず、詰りもしません。次元の意思を尊重して一人で敵地に乗り込みましたが、自分たちの絆が損なわれたとは微塵も思っていないでしょう。
ここからは単なる印象の話ですが、ルパンは次元の不理解を 積極的に許容しているような気がします。ちょうど不二子の裏切りを「女のアクセサリー」だと言ってしまうのと同じ感覚で。圧倒的な高みに立つルパンだから こそ、次元の普通さをむしろ愛してしまうくらいの懐の深さを持っていると思うのです。しかも次元の本心は、「敵いっこない化け物」に挑むルパンの 無謀ではなく、ついていくと言えない自分自身の方を責めています。そんな相棒の心境に気付かぬルパンではないし、次元が見せた情・義理堅さに心が動かないくらいなら元々そばに置いていないでしょう。
そしてこれだけ根源的な違いを抱えているにもかかわらず、結局ルパンを追ったところに、次元がルパンの相棒であり理解者である理由があるのだと私は思います。
前編
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